政府機関、エネルギー業界、小売業界といった多岐にわたる分野で20年以上の経験を持つケリー・グスタフは、技術的な専門知識、運用に関する知見、人を第一に考えるリーダーシップを併せ持ち、Ada Infrastructureのグローバル環境・健康・安全(EHSー Environmental, Health & Safety )部門の責任者に就任しました。ここでは、子どもの頃から抱いていた環境への関心が、どのように「安全で持続可能な仕組みづくり」というキャリアへと発展したのか、そしてデータセンター業界が彼女に新たなフロンティアをもたらす理由について語ってもらいます。
これまでの経歴と、Adaに入ったきっかけを教えてください。
子どもの頃から常に、環境問題や気候変動に興味を抱いていました。大学入学時は医学部進学を見据え、ネブラスカ大学で生物学を学びましたが、最終的に自分が本当に興味を持てるのは環境科学なのだと気がついたのです。そこで私はミドルベリー国際大学院(Middlebury Institute of International Studies) の修士課程で国際環境政策を学び、グローバルな視点を持ちました。
大学院修了後、最初に就いたのは アメリカ・ワシントン州での原油流出対応の仕事でした。環境リスクの高い現場での対応という実践的な経験は、私のその後のEHSキャリアの土台となりました。その後、bpで環境関連業務、スターバックスでの危機管理を担当したのち、安全管理リーダーの役職に携わりました。 ロンドンではbpの上級安全管理役員と直接仕事をする機会も得ました。それらの機会によりリスクへの向き合い方や対応、そして組織のレジリエンス構築についての理解を深めることができました。
私がAdaに惹かれたのは、このような経験を急速に変化する成長業界で活かす機会があると思ったからです。この業界においては優れたEHSのあるべき姿を定義している最中です。またコミュニティや持続可能性、イノベーションを重視する Adaの価値観にも深く共感しました。
エネルギーや小売などの分野でグローバルな役割を担ってきた経験はデータセンター分野における安全性と持続可能性の取り組みにどう生かされますか。
グローバルに働くことは、謙虚さと好奇心をもってリーダーシップを発揮することが必要なのだと教えてくれます。国や地域によって法規制、リスクのレベル、文化的な行動規範は驚くほど異なります。その中で共通の基盤を持ちながら、現地の状況に合わせて柔軟に適応できる EHSプログラムを設計することが大切だと思っています。人々がそれぞれの地域で主体的に取り組めるよう、同時にグローバルレベルの規範をしっかりと維持する――この両立がうまくいくプログラムが理想ですね。 。
データセンターにはさまざまな種類の複雑さが伴いますが、それは同時に挑戦しがいのあるものでもあります。ある意味では、データセンター業界の現状は、100年前の石油・ガス業界に少し似ているかもしれません。急速に拡大し、社会からの監視も厳しくなり、そして依然としてその運用基準を模索している。それはつまり、最初から正しい形を築く大きなチャンスだと言えます。
Adaにおいて世界トップレベルのEHSプログラムを構築するための優先事項は何ですか?
私は次の3つに焦点を置いています。リスクベースの設計、外部パートナーの管理、「安全第一」のリーダーシップ文化です。
私たちは他の高リスク業界で使われている枠組みをそのままコピーすることはしません。私たちが直面しているリスクをよく見極め、それに合った明確で実践的な方針や手順を整備することが重要だと考えています。 また私たちは多くの業務を外部のパートナー企業に委託しているため、パートナー企業の安全管理は非常に重要です。適切なパートナーを選び、信頼関係を構築し、 明確な指針を設定する。そして成果の継続的なモニター、測定、改善していける仕組みがあってこそ長期的に成功すると思います。
さらに文化です。Adaにはすでに強固な基盤がありますが、私が目指すのはそれをさらに広げることです。信頼を築き、安全管理のためのプラットフォームなどシンプルなツールを導入し、透明性とオープンなフィードバックを促進します。最良のEHSプログラムは単独で構築できるものではありません。現場の声を傾聴し、協力しながら改善を重ねることで形作られると考えています。
AIや高密度コンピューティングの拡大に伴い、EHSの役割はどのように変化していると考えますか。
テクノロジーはEHSの重要なツールになりつつあります。私が特に期待しているのは予測分析です。AIやデータを使用して、まだ発生していないリスクを察知し、事前に手を打つことができれば大きな進歩です。
最近、 AIを使って EHSポリシーを 現地の法律や国際基準、新たなリスクへ照らし合わせるという取り組みをしているスタートアップ企業と話をしました。そうしたツールは、私たちのようなグローバルな組織ではゲームチェンジャーになる可能性があります。事後対応ではなく、常に先回りしてアクションを取れるようになりますからね。
また、世界中の拠点やパートナー間で、 インシデントから得られる教訓を共有する方法についてもいろいろ考えています。私たちの最終的な 目標は、「継続的な学習と改善の文化」を育むことです。そこにテクノロジーを活用することで大きくスケールアップさせたいですね。
レガシーシステムを継承するのではなく、AdaでEHSをゼロから構築することにどんな魅力がありますか。
率直に言うと、新鮮さです。これまでの役割では、部分的な修正を繰り返してきたシステムを見てきました。たとえて言うならば、家の増改築を重ねすぎて動線が複雑になっているような状態ですね。そうなると非効率だし、理解もしづらいのです。
一方Adaでは、「何が本当に価値を生むのか?本当に安全性を高めるには何が必要か?」
という問いを 最初から考えながら、意図をもって仕組みを設計できるのが大きな強みです。 「昔からこうやってきたから」という理由だけで導入するのではなく、必要性をきちんと検討してから導入できます。また私たちは、業界標準をただ受け入れるだけでなく 、自分たちがその標準の形づくりにも貢献できるのは大きな意義があります。 規制当局と早期に連携し、パートナーシップを構築し、データセンターのEHSの「こうあるべき」を共に定義していける。 これは先手を打つだけでなく、社会的にも責任ある姿勢だと思います。 EHS分野、特にデジタルインフラストラクチャ分野でのキャリアアップを目指す若手にどのようなアドバイスがありますかまずは成長し続けるマインドセットを持つことが大事だと思います。EHSは、環境コンプライアンスや運用の安全性、危機対応、さらには労働者の権利まで、ビジネスのあらゆる部分に関わります。学び続けていけばいくほど、幅広く深い影響を与えられる魅力的な 分野です。
つぎにキャリアを急がないことです。現場をきちんと理解する時間を持ってほしいです。 設備や手順、実際の現場での作業を知ることが優れたEHS専門家としての土台となります。
最後に、良いメンターを見つけてください。私自身、これまでのキャリアを通して素晴らしいメンターがいて、技術的な判断からリーダーとしての成長まで、あらゆる面で私を導いてくれました。もしEHSに情熱を持っていて、でもどこから始めたらよいかわからない場合は、ぜひご連絡ください!このキャリアを探求している方々とつながれることを楽しみにしています。
ケリーは、様々な業界で15年以上の経験を持つ、経験豊富なEHS(環境・健康・安全)専門家です。Ada以前は、bp社で12年間、安全リーダーシップ、環境コンプライアンス、危機管理、政策立案など、様々な役職を歴任し、複雑な課題に対する革新的なソリューションの創出に尽力しました。現在は、環境システムの強化、カーボン戦略の管理、そしてレジリエントな安全フレームワークの構築に注力しています。