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未来を力づける – パート 1:Rabih Bashroush 教授が推進するデータセンター内でのコミュニティエンゲージメントと持続可能なイノベーション

2025年2月26日
Professor Rabih Bashroush, University of East London

Ada Infrastructure の ESG およびサステナビリティリードである Joyce Dickerson が イーストロンドン大学(UEL)のエンタープライズコンピューティング(EC)ラボディレクター Rabih Bashrosh 教授にお話を伺い、その様子を前編後編の2部構成でお届けします。前編ではEC ラボとその活動が地域コミュニティに与える影響、Ada Infrastructure が UEL と連携して展開している AI インフラストラクチャ人材開発プログラム(AITDP)を紹介します。

ご経歴と EC ラボについて教えてください。

私はイーストロンドン大学の教授で、エンタープライズコンピューティングラボのディレクターの役割を担っています。主に、持続可能性に関心を抱くとともにデジタルインフラに焦点を当てており、私が主導している研究グループは以下4 つの領域に注力しています。

1. デジタルインフラの持続可能性の促進:私たちは、政府、欧州委員会、およびハイパースケールデータセンター事業者などのさまざまな企業が資金を提供する、多くの研究プログラムに取り組んでいます。私たちの重要なプロジェクトの 1 つは、欧州委員会が資金を提供する EURECA と呼ばれるプロジェクトで、ヨーロッパの 300 を超えるデータセンターを対象にエネルギー消費の課題と機会を評価しました。2017 年時点では、ヨーロッパのデータセンターが約 130 テラワット時のエネルギーを消費すると推定しました。その頃からのデジタルインフラの成長と AI の出現を考えると、この数値は著しく大きくなっている可能性があります。

2. 政策立案:私たちは、英国、アイルランド、ヨーロッパや世界各国の地方自治体や政府と連携して、独立したデータを提供し、調査を実施しています。私たちの目標は、公平な競争の場を創出し、業界内のより持続可能な慣行を奨励するためには、どのような介入が必要なのかを政府に理解してもらうことです。

3. 業界連携:Ada のような企業を含む業界パートナーと緊密に連携し、スキル開発、研究課題、デジタルインフラの最先端テクノロジーの統合に取り組んでいます。このコラボレーションは、データセンター業界のごく短期および長期の人材ニーズに応える上で必須と言えます。

4. 啓蒙活動:私たちは、自分たちのデジタル習慣が環境に与える影響について一般の方々に認識を持っていただくため啓蒙活動に取り組んでいます。たとえば、データセンターが消費するエネルギーの大部分は、医療や精密農業などの必要不可欠な用途ではなく、ソーシャルメディアやビデオストリーミングなどの活動によって押し上げられています。私たちは BBC などのメディアチャンネルと連携して、デジタル活動が環境に与える負荷に対する理解を促すドキュメンタリーなどの教育コンテンツを作成しています。

これらの分野に加えて、私は CEN/CENELEC/ETSI や ISO/IEC などの組織を通じて IT インフラの標準を策定する活動に深く関わっています。この分野での私の活動は、グリーン公共調達(GPP)、環境管理監査制度(EMAS)、エコデザイン規則に関連するイニシアチブを含む、いくつかの国際的な政策や法律に関わってきました。

この多面的なアプローチを通じて、デジタルインフラにおける持続可能性の課題に多角的に取り組むことができ、テクノロジーの進歩だけでなく、これらを支える政策の構築や一般の方々の認識の向上も高めることができます。

EC ラボではどのように地域社会がデータセンターの利点を理解できるようにサポートしていますか。

私たちの取り組みで重要なことは、データセンターの利点と現実について地域コミュニティの認識を高めることです。多くの場合、データセンターに対する認識はしばし偏っており、多くの人々がデータセンターを「エネルギーを大量に消費する悪者」と見なす傾向があるようです。私たちは、データセンターのエネルギー消費を押し上げているのはエンドユーザーの需要によるものであることを伝え、このような見方を変えることを目指しています。

私たちはデジタル習慣が環境に与える影響についての認識を高めるために、メディアと協力し数多くのプログラムを実施しています。たとえば、データセンターが消費するエネルギーの大部分は、医療や精密農業ではなく、ソーシャルメディアのコンテンツや動画の保存と処理に使用されています。私たちは、一般の方々にデータセンターが人々デジタル習慣の需要を満たすために建設されていることを啓蒙し理解してもらうのです。

私たちが採用している効果的な方法の 1 つは、地域社会と直接関わるイブニング・トークです。このセッションで、参加者に自身のデジタル習慣について振り返ってもらいます。たとえば、人々はたいていスマートフォンで毎年何千枚もの写真を撮影している一方、見返しているのはそれらの一部だけです。しかしこれらの写真をクラウドに保存するためには、大量のエネルギーが必要なのです。英国だけでも、不要な写真やビデオを保存するために、リバプールのような都市の1年分の電力を消費しています。

さらに、メールの使用状況についても同様の啓蒙活動を実施しています。不必要な大容量の添付ファイル付きメールの送信や全員への返信は、大量のストレージ要件とエネルギー消費につながります。これらの影響を一般の方々に認識してもらうことで、デジタル行動についてより多くの情報に基づいた意思決定を行えるように促します。

また、地方自治体や当局と緊密に協力し、エネルギー消費に関する中立的なデータを提供し、調査を実施しています。これは、持続可能な活動を推進し、データセンターの高いエネルギー消費の根本原因に対処するための政策立案に役立ちます。私たちの協力関係は、データセンターが私たちのデジタルライフスタイルを支える不可欠な存在で、独立した存在ではないことを強調し、デジタルエコシステムの全体像を提供することを目指しています。

これらの取り組みを通じて私たちは、一般の方々にデータセンターが消費するエネルギーと自分たちのデジタル習慣が相互関係にあることを認識してもらい、より多くの情報を持ってもらいたいと考えています。この認識を高めることで、より責任のあるデータ利用を促進し、持続可能なデータセンターをサポートできます。

ADA Infrastructure は今年、UELと提携してAI インフラストラクチャ人材開発プログラム(AITDP)を実施し、地域コミュニティにおいてデータセンター業務ができるプロフェッショナル人材のトレーニングします。このプログラムの目的と、地域コミュニティにどのようなメリットがあるのか詳しく教えてください。

AITDP の主な目的は、データセンター業界における人材格差の解消と、特定の地域における失業対策に取り組むことです。データセンター業界は急速に成長しており、スキルを持つプロフェッショナル人材に対する需要は高いです。このプログラムは、データセンター業務に関するトレーニングを受けた人材に対するニーズに応えられるように設計されています。的を絞ったトレーニングを実施することで、参加者に必要なスキルを身に付けてもらい迅速に実践の場に出られるようになることを目的としています。

このプログラムは、元軍関係者、自動化や AIの影響を受ける業界からの転職者、新卒者など、さまざまな参加者を対象としています。特により多くの女性にこの業界にきていただき、従業員内の人材プールを拡大することに注力しています。

このカリキュラムは、データセンター業界を詳細に紹介し、さまざまなタイプのデータセンターとその構成要素、クラウドコンピューティングと AI、データセンターにおけるそれらの役割、データセンター運用に不可欠な機械および電気インフラ、エネルギー消費パターンと持続可能性の実践、データセンターの運用、保守、および信頼性と回復力の重要性など、さまざまなトピックを扱います。

参加者は、業界の最新テクノロジーとベストプラクティスに関する実践的トレーニングを受けます。この実践的な経験は、データセンター業務に即戦力として就職するための重要な準備となります。

このプログラムは、いくつかの点で地域コミュニティに利益をもたらすように設計されています。第一に、失業中またはまだ就職していない人々に需要の高いスキルを身に付けてもらうことで、就業機会を提供します。第二に、地域の人材プールを形成して、企業がスキルを持つ従業員を求めて地域コミュニティの外で探す必要性を減らします。これはひいては、地域経済を支えることにもなります。

このプログラムは、即戦力となる人材を確保するだけではなく、長期的なキャリア開発も目的としています。さまざまな経歴を持つ人材のスキルアップを図ることで、データセンター業界の将来のニーズに対応する人材を安定して提供するパイプラインを確保します。このように継続的に人材を開発することは、業界の成長を支えるサポートできる強固で熟練した労働力を維持するために不可欠です。

Ada Infrastructure との協力は、このプログラムの重要な側面です。業界パートナーと緊密に連携することで、提供されるトレーニングが適切で、現在の業界標準や慣行に沿った最新のものになるようにします。このパートナーシップは、理論的な知識と実践的な応用のギャップを効果的に埋めるため、トレーニングがより効果的で、現実社会にすぐに適用できるようになります。

後編では、データセンターの進化、エネルギー消費、デジタルインフラの未来についてご紹介します。

Professor Rabih Bashroush,

University of East London

Bashroush 教授は、デジタルインフラと持続可能性の分野で著名なエキスパートで、100 を超える学術論文を公開しているこの分野の第一人者です。公共部門および民間部門の IT インフラ変革プロジェクトに統合、クラウド導入、回復力、持続可能性を対象とした戦略的助言を提供しています。ICT の省エネルギーにおける業績で英国大学トップ 100 Best Breakthrough リストに掲載されており、2018年の Industry Initiative of the Year DCD Global Awards を受賞しています。EURECA や欧州委員会 DG CONNECT スマートシティー研究クラスターなどの欧州イニシアチブを主導。英国、アイルランド、欧州委員会など、さまざまな政府に助言し、支援しました。英国規格協会(BSI)で、CEN/CENELEC/ETSI および ISO/IEC と連携しながら、IT インフラストラクチャ標準化を対象とする電気通信部門委員会委員長を務めています。その業績はいくつかの国際ポリシーおよび法制化に影響を与えています。

Professor Rabih Bashroush,
University of East London

Bashroush 教授は、デジタルインフラストラクチャと持続可能性の分野で著名なエキスパートです。公共部門および民間部門の IT インフラストラクチャ変革プロジェクトに統合、クラウド導入、回復力、持続可能性を対象とした戦略的助言を提供しています。ICT の省エネルギーにおける業績で英国大学トップ 100 Best Breakthrough リストに掲載されており、2018年の Industry Initiative of the Year DCD Global Awards を受賞しています。EURECA や欧州委員会 DG CONNECT スマートシティー研究クラスターなどの欧州イニシアチブを主導しました。Bashroush 教授は、英国、アイルランド、欧州委員会など、さまざまな政府に助言し、支援しました。英国規格協会(BSI)で、CEN/CENELEC/ETSI および ISO/IEC と連携しながら、IT インフラストラクチャ標準化を対象とする電気通信部門委員会委員長を務めています。その業績はいくつかの国際ポリシーおよび法制化に影響を与えています。100 を超える学術論文を公開している Bashroush 教授は、この分野の第一人者です。

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